事例に見る働き方改革 時間外労働の削減に向けた取り組み
大企業では4月から、中小企業でも来年4月から時間外労働の上限規制が適用されます。
厚生労働省の事例集より、企業の取り組み事例の一部を紹介します。
※「時間外労働削減の好事例集」。厚生労働省のホームページより参照、ダウンロードできます。
A社(食品製造業)の場合
残業事前申請制度の導入
A社では、従業員が残業を行う場合、従業員が「時間外労働申請書」を管理職に提出することにしました。
管理職は、申請書に基づいて残業で行う業務内容を確認し、残業をしてでも実施する必要があるかどうかを判断して、不要と判断すれば、翌日に回すよう指導します。
この制度によって、どの部門で、どのような理由により、どの程度の残業が発生しているかといった、残業の実態を管理部門が的確に把握できるようになり、時間外労働削減のために、どこから手をつけるべきか、優先順位付けができるようになりました。
その結果、労働時間管理の徹底、部署内のコミュニケーションの改善などが図れ、時間外労働を削減することができました。
工場長のトップダウンで推進
また、「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)」の取り組みを行い、作業場などの環境を改善し、業務を無理なく、無駄なくできるようにしました。
1ヵ月に1回、課、工程ごとの「5S」の実施パトロールを行ったことにより、従業員の意識が変化。
さまざまな無駄を排除し、筋肉質の組織となることで、時間管理の徹底や、時間外労働の適正が図られ、効果的な働き方の実現につながりました。
その結果、過去には1ヵ月あたり30時間以上あった残業時間が半分以下になりました。
B社(印刷業)の場合
時間外労働について労使で協議
B社では、毎月労使で協議を実施して、時間外労働の実態や課題について話し合いを行い、労働時間の削減に取り組んでいます。
たとえば、毎週水曜日をノー残業デーにしています。
やむを得ず残業をしなければならない場合には、上司にノー残業デーの「振替申請」を行い、ほかの日に定時で帰るようにしており、形だけで終わらない工夫をしています。
計画的な従業員教育で能力向上
さらに、ISO9001の認証取得を契機に、従業員の能力向上による時間外労働の削減も目的の一つとし、各部署で「業務力量表」を作成しています。
「業務力量表」をもとに、管理職と当人が相談して「教育訓練計画実施表」を半期ごとに作成。
今後の教育計画(いつ、どの項目を教育するかという計画)を立案しています。
教育後には、能力向上の確認を行い、新たなステップに行くのか、再度教育を行うのかなどを判断しています。
従業員の能力を的確に把握し、効率よく教育ができるようにすることで、時間を無駄に浪費することなく能力向上を図れるようになりました。
ノー残業デーの取り組みをきっかけとして「早く帰る」「仕事を早く終わらせる」という意識が浸透し、結果として、業務を効率よく進められるようになり、時間外労働が削減されるとともに、ワーク・ライフ・バランスも向上して、従業員のモチベーション向上にもつながっています。
教育についても、計画的に行うことにより、従業員ごとに能力の現状とその向上の程度が目に見えてわかるようになりました。
効率よく教育が行えるため、教育する側、教育を受ける側双方でのロスがなくなったと考えています。
これらの事例を参考に、自社の働き方改革の一つして、どのような方法で時間外労働削減ができるかを検討してみてはいかがでしょうか。