健康保険法一部改正 健康保険の被扶養者の認定に国内居住要件が追加
改正入管法の施行などで外国人労働者が今後増えることが予想されます。
これに伴い、健康保険の被扶養者の認定や国民健康保険の資格管理が厳しくなりました。
把握しておくべきポイントを整理します。
新たな「国内居住要件」とは
健康保険の被保険者の被扶養者の認定にあたり、原則として、被扶養者となる者が「国内に居住していること」とする国内居住要件が導入されることになります。
政府の人手不足対策の一環として改正入管法が4月に施行されたことに伴い、外国人労働者の増加が見込まれるため、被扶養者の認定要件をより厳格にすることで、公的医療保険制度の不正利用を防止する狙いもあります。
現行制度では健康保険の被扶養者については居住地の要件がないため、外国人労働者が健康保険の被保険者になっていると、海外に残した扶養家族も一定の要件を満たせば被扶養者として日本の医療保険制度の適用を受けることができます。
このため、被扶養者と認定された家族が現地で医療を受けた場合、自己負担分を除く医療費は保険者たる日本の協会けんぽや健康保険組合が負担することになり、医療保険制度の財政面への影響が懸念されてきたところでもあります。
今回の改正が施行されれば、たとえば、技能実習生や新たな在留資格である「特定技能1号」の外国人労働者が母国に残した家族については、日本の健康保険は適用されなくなります。
海外赴任同行家族等の例外
この国内居住要件は日本人にも適用されることになりますが、次のように一定の例外が認められます。
1.外国にいる留学生その他日本に住所を有しない者のうち、日本に生活の基盤があると認められる者
2.日本から海外赴任する被保険者に同行する家族など、日本で生活しており再度日本で生活する蓋然性が高いと認められる者
3.海外赴任中に結婚した被保険者の配偶者や海外赴任中に生まれた被保険者の子ども
4.観光・保養やボランティアなど就労以外の目的で一時的に日本から海外に渡航した者(青年海外協力隊など)
他方、生活の拠点が日本にない扶養家族で「医療滞在ビザ」で入国した者、観光・保養を目的とするロングステイビザで入国した者などについては、日本に住所があっても被扶養者としないことが予定されています。
経過措置
2020年4月の施行を予定しています。
経過措置として、国内居住要件の導入により被扶養者としての資格を失う者で、施行日時点で入院している者については、入院期間中は被扶養者の資格を継続させる予定です。
国民健康保険の適正化
日本人を含む国民健康保険の資格管理の観点から、国民健康保険の保険者たる市区町村が関係者(外国人については、留学先である日本語学校等や経営管理を行う企業の取引先等、日本人については、雇用主等)に報告を求めることなどができる対象として、被保険者の資格の得喪に関する情報を追加するとしています。
また、市町村が適宜、その信ぴょう性について調査できることが明確化されました。
施行期日は2019年5月22日です。
国民年金第3号被保険者にも国内居住要件
医療保険制度の一部改正に関連し、国民年金第3号被保険者(被用者医療保険制度の被扶養者)についても同様に、国内居住要件を導入し、医療滞在ビザによる滞在社等を対象から除外することとしました。
なお、日本に住所を有しない場合でも、日本に生活の基盤があると認められる場合は、被保険者の認定が受けられます。