パワハラ防止法の施行に備えて!厚労省の指針に基づき、会社のパワハラ防止体制を整える
有名企業からプロスポーツ界まで、パワハラ絡みのトラブルについて報じられる機会が多くなりました。
組織に関連する重大な社会問題になってきています。国も法整備で対策に乗り出しました。
職場のおける「いじめ・嫌がらせ」であるパワーハラスメント(以下、パワハラ)。その防止対策を企業に義務づけるパワハラ防止法(労働施策総合推進法の一部改正)が、今年の6月(中小企業は2022年4月)から施行されます。
それに伴い、1月15日、厚生労働省は、企業がパワハラを防止するための具体的措置を示した指針を告示しました。
指針には、パワハラの定義の他に、裁判例を参考にしたパワハラに「該当すると考えられる例」「該当しないと考えられる例」について具体的に示されています。
また、「相談事案の事実関係の確認」や「パワハラが認められた場合の行為者への処分等の措置」など、企業の担当者にとって何がパワハラなのかや、その対応にあたり留意しなければならない内容が具体的に示されています。
パワハラの定義と要素
指針では、職場におけるパワハラについて、職場において行われる言動で、それが1.優越的な関係を背景としたものであること、2.業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること、3.労働者の就業環境が害されるものであることの3つの要素を全て満たすものであると定義しています。
ただし、その言動が、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務上の指示や指導についてはパワハラには該当しないとしています。
ここでいう「職場」とは、労働者が仕事をする場所をいい、単に会社のみならず、出張先や取引先など労働者が業務を遂行する場所をいいます。
また、「優越的な関係」とは、職務上の地位が上位にある者はもとより、同僚または部下であっても業務上必要な知識や豊富な経験をもっており、その協力が得られなければ業務を円滑に行うことが難しい場合、当該同僚または部下は優越的な関係にあるといえます。
たとえば、上司よりも部下の方がITに詳しいという状況がよく発生します。
その結果「部下の方が上司よりも知識・経験に長けている」という状況を利用し、「こんなこともわからないんですか? それでも課長ですか?」などと上司を誹謗中傷する部下の言動はパワハラ(逆パワハラ)に該当すると言えるでしょう。
「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動とは、社会通念に照らして、明らかに業務上必要性のない、またはその態様が相当性のないものをいいます。
「労働者の就業環境が害される」とは、その言動によりそれを受けた労働者が身体的または精神的に苦痛を受け、就業環境が不快なものとなったため、能力が十分に発揮できないなど、看過できないほどの支障が生じることをいいます。
パワハラ防止のための会社の指針の明確化
事業主は、パワハラによって労働者の就業環境が害されることのないように、労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上の措置を講じなければなりません(労働施策総合推進法第30条の2第1項)。
具体的には、会社としての職場におけるパワハラ行為の禁止に関する方針を明確にし、管理監督者を含む労働者に周知・啓発しなければなりません。
たとえば、社内報や社内ホームページを活用して、何がパワハラとなるのかを具体的に例示するとともに、その発生原因や背景なども含めてパワハラが起きない職場環境とするよう周知・啓発することや定期的にパワハラ防止研修を実施するなどです。
また、就業規則や服務規律などにパワハラ禁止規定を定めるとともに、行為者には懲戒規定を適用するなど、厳正に対処する旨を周知する必要もあります。
相談体制の整備
事業主は、パワハラに関する労働者からの相談に対して、その内容や状況に応じて適切かつ柔軟に対応するために、あらかじめ相談窓口を定めて、それを周知しなければなりません。
相談窓口の設置にあたっては、相談担当者を決める、どのような相談体制とするか、など具体的に示すことが求められます。
相談窓口担当者を設けた場合には、その担当者が、パワハラの相談に対して適切に対応できるよう、留意点などをまとめたマニュアルを作成し、それに基づき対応できるようにすることや相談対応についての研修を行うなどの検討も必要です。
パワハラが起きた場合の迅速かつ適切な対応
事業主は、パワハラの相談の申し出があった場合には、その事業に係る事業関係の迅速かつ正確および適正な対処のために次の措置を講じなければなりません。
1.事実関係の正確な確認
相談者および行為者の双方から事実確認を行ない、相談者と行為者との間で事実関係の主張に不一致がある場合などは、第三者(職場の他の労働者)からの事情聴取も必要です。
2.被害者に対する配慮と加害者への処分
パワハラの事実が確認できたら、被害者への配慮として配置転換や行為者からの謝罪などの措置も必要となります。
また、行為者に対しては就業規則に基づき、必要な処分を行わなければなりません。
なお、再発防止のためにも再度方針の説明、研修などを行う必要もあります。