労働経済動向調査 人材不足傾向が継続。正社員等で建設業が顕著
厚生労働省は2020年2月の「労働経済動向調査」の結果を発表しました。
労働者の過不足度では、今回も不足傾向が見られる結果となりました。
ただし、雇用形態別で子細に見ていくと、不足傾向にも業種別の特徴があるようです。
正社員等、パートタイム労働者とも「不足」とする事業者が引き続き多い
この調査は四半期に1度、年4回行われています。
以下にまとめる結果は2020年2月1日現在のデータです。
調査では、「D.I.」(Diffusion Index)という、「変化の方向性を示す指標」を用いて労働経済動向を分析しています。
これはある質問に対する対照的な2つの回答について、それぞれの回答率を算出し、その差を数値化するというものです。
例えば、人材の過不足度についての質問では、正社員等労働者について「不足と回答した事業所の割合」マイナス「過剰と回答した事業所の割合」はプラス38ポイントとなります。
これは35期連続の不足超過です。
同様にパートタイム労働者についてもプラス27ポイントで、こちらは42期連続で不足超過。
ただし、ポイントだけでみると、正社員と比較して不足度は低いようです。
正社員等は建設、医療・福祉で不足度が高い
上記の数字をここ数回の経過で見ると、正社員の不足度は2019年2月の調査結果(ちょうど1年前)が45ポイントで過去10年間の中でピークでした。
パートタイム等は2016年~2017年ごろになだらかなピークがあり、そこからは漸減傾向にあります。
業種別で見ると、正社員等とパートタイマーで違いがあることがわかりました(下の一覧表を参照)。
正社員等で不足傾向が高いのは「建設業」(58ポイント)、「運輸業、郵便業」(55ポイント)、「医療、福祉」(52ポイント)などですが、パートタイマーだと、不足度が高いのは「生活関連サービス業、娯楽業」(55ポイント)、「宿泊業、飲食サービス業」(50ポイント)などです。
それぞれの業種において求められる雇用形態の特徴が浮き彫りになっているようです。
所定外労働時間では、建設業だけがプラスで他はマイナス
「所定外労働時間判断D.I.」は、所定外労働時間について「増加」と回答した事業所の割合から「減少」とした事業所の割合を引いたものです。
結果は調査産業全体(2020年1~3月期実績見込)でマイナス3ポイントとなり、全体としては所定外労働時間が減っていることがわかりました。
産業別に見ると、建設業が唯一のプラス(5ポイント)となり、所定外労働時間の増加傾向が見られます。
他業種は全てマイナス(所定外労働時間が減少)で、「サービス業(他に分類されないもの)」がマイナス14ポイントと減少幅が特に高くなっています。
この傾向は正社員等の過不足度と因果関係があると推測されます。
建設業では正社員が不足していて、残業がどうしても長くなるという構造があるのではないでしょうか。