社会保険料等の猶予制度 納付困難なら猶予等の手続きを
新型コロナウイルス感染症が広がりを見せており、企業としてはその対応に追われています。
社員を休業させ、制度融資を受けたとしても、社会保険料の負担は事業の継続にも影響が出てきます。社会保険料等の猶予制度についてまとめておきます。
納税負担同様に社会保険料の負担は、事業経営が苦しくなると重いものとなります。
今般の新型コロナウイルス感染症の影響により、厚生年金保険料等を一時的に納付することが困難となった場合には、保険料の猶予制度を利用することができます。
保険料の猶予制度には「換価の猶予」と「納付の猶予」の2つがあります。
1.換価の猶予
社会保険料の納付期限までに納付せず、かつ、督促状の指定納付期日までに納付しない場合には、延滞金がかかるほか、財産の差し押さえなどの延滞処分を受けることになります。
差し押さえられた財産は売却され金銭に代えられて(換価)未納付保険料に充当されることになりますが、事業経営が悪化し、保険料の納付が困難な場合は、申請により差し押さえや売却を猶予してもらうことができます。(換価の猶予)。
換価の猶予が認められると猶予期間(原則1年以内)中、その保険料額は各月に分割して納付することができるほか、延滞金の一部も免除されます。
2.換価の猶予の申請ができる場合
申請にあたっては次の要件を満たしていなければなりません。
・保険料を一時に納付することにより、事業の継続または生活の維持を困難にする恐れがあること。
・納付すべき保険料等の納付について、誠実な意思(優先的に納付する意思)を有していること。
・本来の納付期限から6ヶ月以内に「換価の猶予申請書」が提出されていること。
・納付すべき保険料について猶予の適用を受けていないこと。
・換価の猶予を受けようとする次に述べる「納付の猶予」を受けている保険料等以外の保険料等の滞納がないこと。
・猶予を受けようとする金額に相当する担保の提供があること。
3.納付の猶予
他方、災害、病気、事業の休廃業などにより、保険料の納付が一時的に困難と認められたときには、事前の申請に基づいて納付を猶予してもらえる制度があります。
納付の猶予が認められるとその期間、延滞金の全部または一部が免除されます。
4.納付の猶予が申請できる場合
申請にあたっては次の要件を満たしていなければなりません。
・納付義務者がその財産につき震災、風水害、落雷、火災その他の災害を受け、または盗難にあったこと、事業を廃止、または休業したことなど。
・その納付すべき保険料等を一時に納付することができないと認められたこと。
・猶予該当事実発生後すみやかに「納付の猶予の申請書」が提出されていること。
・猶予を受けようとする金額に相当する担保の提供があること。
5.必要書類
換価の猶予または納付の猶予の申請にあたっては、次の書類が必要となります。
・猶予を受ける金額が100万円以下の場合は財産収支状況書。
・猶予を受ける金額が100万円を超える場合は、財産目録及び収支の明細書および担保の提供に関する書類。
なお、税金についても、新型コロナウイルスの影響により、今年2月以降の任意の期間(1ヶ月以上)において、事業等に係る収入が前年同期に比べて概ね20%以上減少している場合には1年間、国税(所得税・法人税・消費税等)の納付を猶予することができます。
担保の提供は不要で、延滞税もかかりません。
すでに納期限が過ぎている未納の税金についても遡及して適用することができます。