雇用情勢を示すデータ 雇用情勢は2020年に入り悪化傾向に?
4月28日に厚生労働省と総務省統計局からそれぞれ、今年3月時点の雇用情勢判断の材料となる基本的なデータが公表されました。
コロナ禍の影響が出始めた3月の就労、求職事情に係る数字から、コロナ禍の影響と過去からの推移、今後に向けての注目点を見ていきます。
3月の有効求人倍率は過去3年間で最も低い数字に
厚生労働省が4月28日に発表した「一般職業紹介状況」によると、今年3月の有効求人倍率(※)は1.39倍で、前月(今年2月)比0.06ポイントの低下となりました。
過去に有効求人倍率が1.4倍を下回った月を調べると、2016年9月の1.39倍までさかのぼらなければならず、42カ月ぶりの低水準ということになります。
1カ月の日数ほかの変動要因を調整した「季節調整値」で見ると、有効求職者数は前月比2.1%減なのに対して、有効求人数は5.9%もの減少となっており、ここに来て求人数の減少が顕著になっていることがわかります。
昨年度(2019年度)平均の有効求人倍率は1.55倍となり、前年度に比べて0.07ポイントの低下。
長期的に見れば2018年が暦年、年度ともピークとなっています。
コロナ禍の影響が広がることを考えると、今後も減少傾向が続くでしょうが、例えば2009年度の0.45倍という低水準の数字を見れば、最悪の状況には至っていないという見方もできます。
特に自営業者の苦境を示す就業者数のデータ
一方、総務省統計局は2020年3月分の労働力調査の結果を発表しました。
それによると就業者数(自営や家族経営を含め、仕事をしていた人の数)は6700万人で前年同月比13万人の増加なのに対して、雇用者数(企業等に雇われている人の数)は6009万人で同61万人の増加と、就業者数の伸びを大きく上回りました。
これは逆に言えば、その分自営業者、家族経営者で失業や廃業した人が多かったことを意味します。
最近のコロナ禍もこの傾向に拍車をかけていることが想定されます。
現に、「季節調整値」で就業者数を今年3月と2月とで比較すると、約11万人の減少となり、悪化しています。
1カ月の間に、離職した人が11万人にのぼったという意味になります。
完全失業率2.5%でゆっくりと上昇中
同じ総務省統計局のデータでは、3月の完全失業率は2.5%と、2月の2.4%から悪化。
ただし前年3月も2.5%で水準としては戻ったことになります。
昨年11~12月が2.2%で、1992年10月以後で最も低水準の数字でした。
その点を差し引くと、まだゆっくりとした増加に留まっています(例えば2002年前後は連月、5.0%超でした)。
雇用に関する3月の統計データを見る限り、コロナ禍の影響はまだ顕著に認められるという状況ではありませんが、昨年秋ごろの、良い意味でのピークを超えて息切れしつつある中で、その傾向を一気に強める懸念材料になることが推測されます。
完全失業率で3.0%以上、有効求人倍率で1.0%以下あたりが、当面の攻防ラインかもしれません。
※有効求人倍率 = 月間有効求人数 / 月間有効求職者数。ハローワークを通して仕事を探している人1人あたりの求人数を示した数値。
1倍を切ると、求職者分の仕事がない状態を示す。