新しい生活様式としてのテレワークの課題と労務管理
働き方改革の一環として、テレワークの普及・促進への取り組みが加速されたのは2017年。
東京オリンピック開催へ向けて、交通混雑の緩和に寄与することが目的でしたが、感染症拡大に伴い、テレワークの活用は一種の強制力を持って私達の働き方に影響を及ぼしています。
withコロナ時代へ向け、テレワークをどう位置づけ、定着させていけばよいのか、今回は労務管理上のポイントに着目します。
テレワークの定義
テレワークとは「情報通信技術を活用した時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」と定義され、自宅で働く「在宅勤務」、移動中や出先で働く「モバイル勤務」、本拠地以外の施設で働く「サテライトオフィス勤務」の3つに区分されます。
この区分のうち、コロナ禍において推奨されるテレワークは「在宅勤務」です。
社会的要請としてのテレワークの導入は、自宅を就業場所とすることにより、通勤時の混雑や職場における3密を回避して感染リスクを軽減し、感染症拡大を防止することを目的として、急速に広まっていきました。
「在宅勤務」導入による問題点
テレワーク導入へ向けて取り組みを行ってきた企業は比較的スムーズに移行することができた一方、作業環境や機器設備が不十分にもかかわらず導入に踏み切った企業や、実施することさえままならない企業が多数存在し、それぞれの状況に応じた課題が浮き彫りになっています。
特に環境が未整備のまま急速に拡大した「在宅勤務」は、プライベートとの区別が難しく長時間労働の温床になりやすいことが指摘されています。
在宅勤務が長期化する中で、従業員同士のコミュニケーションが円滑に進まず、孤独感や意思疎通の齟齬により労働者に新たなストレスを与えたことは、仕事に対するモチベーションの低下となって表出しました。
また従業員一人ひとりの行動が見えにくいため、勤怠管理やマネージメントも難しく、実施したものの継続することができない企業が増加していることも新たな問題となっています。
「新しい生活様式」としてのテレワークとは
こうした現状を踏まえ、政府は「経済財政運営と改革の基本方針2020」において、コロナ禍における働き方に対する国民の意識変化に伴い、働き方改革を「新しい働き方・暮らし方」と位置付けて、更に推進する方針を打ち出しました。
テレワークの定着・加速を図る様々な支援をはじめ、1.兼業・副業の促進、2.育児や介護など一人ひとりの事情に応じた多様で柔軟な働き方のための環境整備、3.不本意非正規雇用の解消、4.ジョブ型正社員の更なる普及・促進、5.事業場外みなし労働時間制度や裁量労働制の見直し、6.フリーランスへの保護等、労働時間の管理方法や実態を踏まえた就業、雇用ルールの整備に対する検討を始めています。
働き方の選択肢が増すことにより、業務の電子化、インフラの整備、セキュリティ対策に加え、自己申告による労務管理体制や成果に基づく公平で明確な評価基準の見直しなど、企業側にも迅速な対応が求められています。
感染症対策として広まったテレワーク。
一時的なものではなく、働き方の1つとして労働者側が自由に選択することができるよう最大限に活用し、労働者のやりがいを高めるための1つの手段として確立したいものです。