中小企業の働き方改革関連法への対応 同一労働同一賃金の内容の浸透がいま一つ
働き方改革関連法が中小企業向けにも段階を踏んで施行されていますが、認知度と対応はどうなっているのでしょうか?
日本商工会議所と東京商工会議所が今年2月~3月に全国の中小企業を対象に行った「人手不足の状況、働き方改革関連法への対応に関する調査」の結果から、実情を見ていきます。
中小企業の「働き方改革」への認知度と対応状況を調査
この調査の内容はタイトル通り二分割されます。
このうち人手不足関係では「人手が不足している」と回答した企業の割合が60.5%。
前年比5.9%の減少となりました。
調査実施時期はコロナ禍の影響が出始めた頃であり、これも影響したと思われますが、一方で数年後(3年程度)の人員充足の見通しについては、44.9%もの企業が「不足感が増す」と答えており、人手不足感は依然として根強いことがわかります。
以下では、調査のもう一つの柱である、働き方改革関連法への認知と対応についてみていきます。
2020年4月施行済の領域では認知・対応ともある程度進行
働き方改革関連法の主要3領域のうち、今年4月までに中小企業にも施行された2領域(時間外労働の上限規制、年次有給休暇の取得義務化)については、認知、対応ともにある程度進んでいるようです。
時間外労働の上限規制では、認知が十分でない企業の割合が昨年の19.1%に対して今年は16.2%。
対応状況では昨年は対応の目途がついていない企業の割合が26.8%に対し、今年は18.5%となりました。
まだ2割弱は対応の目途立たずですが、割合が減ってきてはいます。
同様に年次有給休暇の取得義務化では、今年の認知度で認知が十分でない企業は7.1%にとどまり、対応状況では対応の目途がついていない企業の割合は10.0%と1割に過ぎません。
いずれも施行直前などに、さまざまなメディアで啓発がなされたことがある程度奏効しているようです(もちろん、完璧とは言えませんが)。
来年4月施行の同一労働同一賃金では対応に苦慮?
一方、来年4月に完全施行となる同一労働同一賃金では、様相が多少異なってきます。
認知度については、概ね4社に1社で認知が十分ではありません。
そして、「正社員・非正規社員間の待遇差に関する説明の可否」においては、「客観的・合理的に説明ができる」と回答した企業は33%程度にとどまりました。
さらに「対応の目途がついている」企業の割合は46.7%と、全体の半数以下となっています(2018年の調査では31.0%で15.7ポイント増)。
「内容の分かりづらさ」を訴える企業が全体の5割
下の図は、同一労働同一賃金の対応に際しての課題を示しています。
内容の分かりづらさを挙げる企業は全体の5割を超えました。
2番目に多い「増加した人件費を価格転嫁できない」や3番目の「非正規社員の処遇改善に充てる原資がない」は、人件費高騰を危惧する中小企業の本音が見える結果と言えるでしょう。
施行まで半年余りしかありません。
対策の検討の前段として、まず法令が定める原則論について、いま一度認識を深める必要がありそうです。