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【コンプライアンス遵守が重要】求人不受理条件が新規学卒者から一般求人に拡大

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投稿日:2020年11月1日(日)

コロナ禍の影響で人手不足感が和らいできているとはいえ、長期的には労働力不足は続いていると言えます。

人材確保戦略をしっかり立てて実践することが肝要ですが、法令遵守が求人活動においてますます求めされるようになってきています。

2020年当初までの企業の「人手不足」という状況は、新型コロナウイルス感染症の影響による急激な業績悪化に伴い、新卒内定取消も出るなど、労働市場は「売り手市場」から「買い手市場」へ潮目が変わりつつあります。

これまで採用に苦労してきた新型コロナウイルス感染症の影響が少ない会社にとっては、人材獲得のチャンスと言えるかもしれません。

こうした中にあって、3月30日より、求人に関する職業安定法施行規則の一部改正が施行され、今まで以上に厳しい規制が課せられています。

ハローワークや職業紹介事業者(大学や特定地方公共団体などを含む)は、求人者に対して、1.その求人の申込内容が法令に違反する場合、2.労働条件が通常の労働条件と比べて著しく不適当な場合、3.求人者が労働条件を明示しない場合を除き、求人の申し込みを受理しなければならないことになっています(職業安定法第5条の5)。

しかし、2016年3月施行の青少年の雇用の促進等に関する法律(別称:若者雇用促進法)の一部改正により、ハローワークは労働基準法や最低賃金法などの一定の労働関係法令に違反し、是正勧告を受けている場合や法令違反により企業名を公表された事業所からの新規学卒者の求人申し込みは受理しない(以下、求人不受理という)ことができるようになっていました。

なお、ハローワーク以外の職業紹介事業者についてもハローワークに準じた取り組みが勧奨されています。

加えて、2020年3月30日からは、この求人不受理の規制が新規学卒者に限らず「一般求人」まで拡大され、すべての求人に関して、一定の労働関係法令に違反している求人者からの求人、暴力団員等からの求人については受理しないことができるようになりました。

したがって、今後、求人活動においては、来年度の新卒採用を含めたすべての求人についてこれら改正内容を踏まえた取り組みをしなければなりません。

求人不受理の対象となる場合

求人不受理の対象となる労働関係法令違反とは、労働基準法および最低賃金法に定める特定の規定(以下、対象条項という)に関して、1.過去1年間に2回以上同一対象条項違反により是正指導を受けた場合、2.対象条項違反で送検され企業名を公表された場合、3.その他当該違反行為が労働者の職場への定着に重大な影響を及ぼすおそれがある場合が該当します。

また、職業安定法、男女雇用機会均等法および育児・介護休業法の対象条項に違反し、都道府県労働局長からの是正勧告に従わず企業名を公表された場合も該当します。

求人不受理の対象となる労働基準法、最低賃金法、職業安定法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法違反の該当規定の詳細は、政省令に定められています。

例えば、時間外・休日労働に関する協定(36協定)違反、残業代の未払いなどの労働基準法違反、最低賃金に満たない賃金で労働させているなどの最低賃金法違反などがこれに該当します。

また、女性活躍促進法の施行に伴い、2020年6月1日から、対象となる規定が追加され、1.労働者がセクシャルハラスメントなどに関する相談を行ったことなどを理由に不利益取扱いをしたこと、2.職場におけるパワーハラスメント防止に関する事業主の雇用管理上の措置義務違反、パワーハラスメントに関する相談を行ったことなどを理由に不利益取扱いをしたことなどにより、都道府県労働局長から是正勧告、企業名を公表された場合も求人不受理の対象となります。

なお、これらの法令の対象条項に違反している状態にあるだけで、ただちに求人不受理となるわけではありません。

労働基準法および最低賃金法違反については「過去1年に2回以上、同一条項の違反で是正指導を受けていること」「送検され、公表された場合」、職業安定法、男女雇用機会均等法および育児・介護休業法については「是正勧告に従わず、公表された場合」が求人不受理の条件であり、是正勧告を受けたとしてもそれに従って、法令違反の状態を是正し、改善報告すれば、企業名が公表されることも、求人の申込みが不受理となることもありません。

しかし、重要なのは都道府県労働局や労働基準監督署から是正指導・勧告を受けないような労務管理体制を整備することです。

求人不受理の期間

求人不受理の期間は、法違反に対する処分が是正勧告を受けた場合、企業名が公表された場合、書類送検になった場合でそれぞれ異なります。

具体的には表のとおりですが、表1.3.は法違反が是正されるまでの期間および是正後6か月を経過するまでの期間とされ、2.の法違反で送検され公表された場合は、送検後1年間とし、その時点で是正後6か月経過していないときは是正後6か月時点まで不受理期間となります。

いずれの場合も不受理期間経過後に是正状態が維持されていることを確認した上で、不受理が解除されることとなります。

求人者の自己申告

このほか、改正によりハローワークに加えて職業紹介事業者も、求人者からの求人の申し込みの受理にあたり、求人者が求人不受理の要件に該当するか否かについて、自己申告を求めることができることになりました。

求人者に自己申告を求め、それを拒否された場合には、求人の申し込みを受理しないこともできます。

さらに都道府県労働局長は、事実に反する自己申告を行った求人者に対しては勧告、企業名を公表することもできます。

ここでいう、求人者の自己申告について厚生労働省が例示している「自己申告書」の内容を見ると、労働基準法、最低賃金法の違反行為で、過去1年の間に労働基準監督署から是正勧告を受けたり、職業安定法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法違反で是正勧告または改善命令に従わずに企業名が公表されたりしていないか、といった質問に対し、チェックシートで回答する形式となっています。

2020年6月からは、セクハラ、パワハラなども自己申告の対象となっています。

帝国データバンクが8月25日に公表した「人手不足に対する企業の動向調査」(2020年7月)によれば、新型コロナウイルスの影響で企業の経済活動が制約されたこともあり、企業の人手不足感が急激に低下していることが明らかになりました。

2019年度の人手不足倒産は前年度比14.8%増と6年連続で過去最多を更新していましたが、新型コロナウイルス感染拡大による経済の悪化によって企業は一転して人手が過剰気味になっているとの結果が出ています。

しかし、日本の少子高齢化は継続的な課題であり、経済が回復すれば人手不足の状況が再燃します。

将来を見据えてより良い人材獲得ができるように、労務コンプライアンスを遵守した社内体制づくりをしておく必要があります。

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