【健康保険法の一部改正】傷病手当金の改正など被保険者への影響
去る6月4日に、「全世代対応型の社会補償制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」が成立。全ての世代で広く安心を支えていく「全世代対応型の社会保障制度」を構築するために健康保険制度等の一部が改正されました。
傷病手当金の支給期間の通算化
健康保険法や船員保険の被保険者で業務外の事由による療養のために働くことができないときは、その労務不能となった日から起算して3日(待機期間)を経過した日から労務不能の期間の生活保障のために、傷病手当金(原則、労務不能の日1日につき標準報酬日額の3分の2相当額)が支給されます。
現行法での支給期間は、支給開始日から暦日1年6か月が限度です。
その間に一時的に就労可能となったため職場復帰して就労し、再び労務不能となっても、就労期間を含めてその期間を超えて支給されることはありません。
しかし、今日、がん治療や精神疾患などで療養している被保険者には、求職、復職を繰り返すケースも多く、復職期間を含めて支給期間を計算されると安心した療養生活ができないことにもなります。
そこで、「治療と仕事の両立」の観点から、療養期間中の柔軟な所得保障を行うことができるように、支給期間は就労期間を除いて通算して1年6か月とすることになりました(令和4年1月施行)。(図参照)
任意継続被保険者制度の見直し
健康保険の適用事業所で被保険者となっている者が退職し、再就職して新たに被用者医療保険の非保険者とならない場合には、退職後2年間を限度に、退職時の会社の健康保険の被保険者資格を継続することができます(任意継続被保険者)。
現行法では、この任意継続被保険者となった場合、その資格を喪失できるのは、次のいずれかに該当する場合に限られ、資格喪失時期を選ぶことができません。
・任意継続被保険者資格を取得した日から2年を経過したとき
・再就職して他の被用者保険制度の被保険者となったとき
・後期高齢者医療保険制度の被保険者となったとき
・保険料(初めて納付すべき保険料を除く)を納付期日までに納付しなかったとき
・死亡したとき
今回の改正では、新たに喪失事由が追加され、任意継続被保険者がその資格を喪失することを希望するときは厚生労働省令で定めるところにより、保険者に申し出た場合に、その申し出が受理された日の属する月の末日に喪失することができることになりました(令和4年1月1日施行)。
育児休業中の保険料免除要件の改正
現行法では、育児・介護休業法に基づく育児休業等(育児休業および育児休業に準ずる休業)中の被保険者については、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の保険料が免除されます。
免除期間は、育児休業等を開始した日の属する月から育児休業等が終了する日の翌日が属する月の前月までの期間です。
つまり、月末のたった1日であっても育児休業等をした場合にはその月の保険料(賞与支給月であれば賞与に係る保険料も)免除されます。
他方、育児休業の期間が1週間や2週間といった場合でも、休業期間が月途中までであればその月の保険料は免除されません。
この保険料の免除の仕組みが改正されました。
月末1日のみの育児休業等の場合でも当月保険料の免除は変わりませんが、賞与の保険料免除は育児休業等の期間が1か月を超えていることが必要となります。
したがって、賞与支給月の月末1日の育児休業だけでは免除されません。
また、育児休業等をはじめた月については、その月の末日が育休期間中である場合に加えて、休業等日数が14日以上の場合にはその月の保険料が免除されることとなります(令和4年10月1日施行)。