2つのタイプの同時加入が原則可能に 確定拠出年金の改正ポイントと活用メリット
2020年6月に公布された『年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律』は、今年4月から段階的に施行されています。
今回は、日本における年金制度の体系を踏まえ、確定拠出年金制度改正の施行ポイントをお伝えします。
独自の年金制度体系
日本の公的年金制度は、『国民皆年金』です。
安定的に保険料を徴収し、予測できない将来のリスクに対し、社会全体で支え合い、生涯を通じた保障を実現するという考えのもとに誕生しました。
20歳以上のすべての人が加入する国民年金を基礎に、民間企業などに雇用されている被用者が加入する厚生年金保険などの公的年金に加え、企業年金の3階建て構造となっています。
企業年金は、高齢期における所得保障を目的として、企業が従業員を対象に任意で実施する年金制度です。
1960年代以降、戦後の高度成長期やバブル崩壊といった社会・経済情勢を背景に、退職金に代わる制度として普及しました。
企業年金には、確定給付企業年金や確定拠出年金などがあります。
確定拠出年金は、企業年金制度改革のなかで、個人や企業の自主的な努力を支援する目的で、2001年に法制度化され、運用が始まりました。
確定拠出年金の仕組み
確定拠出年金は、加入者ごとに拠出された掛金を、加入者自らが運用し、その運用結果に基づいて給付額が決定される制度です。
事業主が主体となる企業型(以下、企業型DC)と、個人型(以下、iDeCo)の2タイプがあります。
企業型DCは、従業員が加入者となり、企業の制度運営に沿って拠出された毎月の掛金額に応じて、従業員自ら運用商品を選択します。
掛金を全額事業主が拠出するほか、規約による一定条件のもと、従業員が事業主の拠出分に掛金を上乗せする『マッチング拠出』や、給与の一部を掛金とする『選択型』など様々な設計方式があります。
今回の法改正では、厚生年金被保険者(70歳未満)であれば、原則すべての人が加入対象となりました。
また受給開始時期の上限年齢は、70歳から75歳に引き上げられています。
iDeCoは、国民年金基金連合会が実施する制度で、個人が加入し、掛金は加入者自らが拠出します。
今回の法改正により、国民年金の被保険者であれば65歳未満まで加入可能となりました。
企業型DCと同様、受給開始時期の上限年齢は70歳から75歳に引き上げられています。
同時加入の要件緩和
現在、企業型DCに加入している方がiDeCoに加入するには、労使の合意に基づく規約などの定めと、かつ事業主掛金の上限引き下げが必要です。
法改正により、10月以降は規約などの定めがなくても、原則同時加入が可能となります。
条件として、企業型DCの事業主掛金とiDeCoの掛金の拠出限度額に応じて、合算管理の仕組みを構築することが必要です。
企業型DCの事業主掛金とiDeCoの掛金については、2018年1月より年単位での拠出も可能となっていますが、今回の要件緩和は、各月の拠出限度額の範囲内での各月拠出に限られています。
また『マッチング拠出』利用者の同時加入はできないので注意しましょう。
企業型DCの導入メリット
確定拠出年金制度には、様々な税制優遇があります。
掛金、運用益は全額非課税であり、企業型DCの事業主掛金は損金計上することができます。
更に『選択型』方式の場合は、社会保険料も対象外となるため、折半負担する事業主にとっても負担軽減が期待できます。
また受給方法に関しては、一時金として受給した場合は退職所得控除、年金として受給した場合は公的年金等控除が適用されます。
今回の法改正は、長期化する高齢期の就業に対し、経済基盤の充実を図り、より多くの企業や個人が制度を活用できることを目的としています。
『70歳雇用時代』を迎えるにあたり、高齢者の就労と年金の問題を理解することは必要不可欠です。
自社にとって、働くモチベーションを維持した長期就労の在り方とは何か、今一度考えてみてはいかがでしょうか。