企業の多くが正社員と非正社員の待遇差を見直し 非正社員の雇用・賃金についての調査
「働き方改革」では、「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」を目的の一つとしています。
同一企業内における正規・非正規間の不合理な待遇格差をなくすため、さまざまな施策がなされていますが、現状はどうなのでしょうか。
産労総合研究所の調査結果を見ていきます。
人事や労務分野の調査・研究機関である産労総合研究所は毎年、春季労使交渉を前に「春季労使交渉にのぞむ経営側のスタンス調査」を実施、結果を公表しています。
賃上げの見通しとその背景などを企業にアンケート調査したものですが、ここでは2023年の同調査から非正社員の雇用と賃金および正社員の雇用についての結果を取り上げます。
4人に1人が非正社員
企業における全従業員に占める非正社員の割合を見ると、2022年12月の調査時点で平均23.5%でした。
つまり約4人に1人が非正社員ということになります。
今後の雇用について経営側はどのように考えているのでしょうか。
非正社員を雇用している企業の今後の見通しについての回答は、「パート等」「契約社員」「派遣社員」に対しては「現状維持」が最も多く、「パート等」が79.0%、「契約社員」が75.0%、「派遣社員」が75.9%でした。
ただ、「嘱託社員」においては「現状維持」は58.3%で、「増加」が32.2%という結果になりました。
これは2021年の高年齢者雇用安定法の改正で70歳までの就業確保措置が努力義務として課されたことから、定年後の嘱託社員が増えることを想定した数字だと産労総合研究所は分析しています。
一方、2023年度春入社予定の新卒採用は「採用(予定)あり」が88.4%。
その採用状況については「計画どおり採用できた」が43.7%、「計画どおり採用できたものの想定以上に内定辞退者が出た」が16.5%、「採用枠に達しなかった」が39.8%でした。
また、正社員の雇用に対する今後2〜3年の企業の見通しについてては、「増加」が38.2%、「現状維持」が55.4%、「減少」が6.4%という回答になっており、採用意欲は高いものの人手不足に苦戦しているようです。
格差是正への取り組み
同調査では「同一労働同一賃金」への対応状況についても聞いています。
「正社員と同じ仕事をしている非正社員がいる」と答えた企業は全体の52.8%。
このうち、待遇差について「見直しが完了した」という企業は60.2%で、前回調査の47.7%から12.5ポイント増加しています。
「見直しに着手した」は26.0%、「見直していない」は13.8%で、同一労働同一賃金への対応は徐々に進んでいるようです。
また、2022年度の地域別最低賃金の全国加重平均額は前年から平均で31円引き上げられて961円となりました。
この引き上げ額は1978年度に目安制度が始まって以来の最高額で、その影響については図表の通り。
「1000人以上」「300〜999人」「299人以下」のいずれの企業も「非正社員の賃金改定を行った」割合が高くなっています。
同一労働同一賃金や最低賃金の引き上げは正社員と非正社員の格差是正につながります。
一方で人件費が増大するため、企業は設備投資の見直しなどの業務改善策を考えていく必要があります。