2022年度の「雇用均等基本調査」の数字から見る従業員の育児と介護に対する企業対応の現状
昨年10月の産後パパ育休(出生時育児休業)施行、今年4月の常時雇用する従業員数1000人超の企業の育児休業取得状況公表義務化など、育児・介護休業法の改正が進められ、企業は細やかな対応が求められます。
そこで、厚生労働省の調査から企業の育児・介護対応の現状を確認します。
「雇用均等基本調査」は男女の雇用均等問題に係る雇用管理の状況や、育児・介護休業制度等の実態を把握することを目的に、厚生労働省が企業および事業所に対して毎年実施している調査です。
7月31日に公開された2022(令和4)年度の調査によると、男性の育児休業取得者の割合は17.13%。
前年度から3.16ポイント増加し、過去最高を更新しました。
しかし、今年6月に閣議決定した「こども未来戦略方針」で掲げられた目標「2025年に男性の育休取得率を民間50%、公務員85%」「2030年に民間も85%」とは大きな差があるといえます。
一方、同省が同日に公表した「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査」(速報値)では、従業員数1000人超の企業の男性育休等取得率は46.2%でした。
両調査における調査時期が産後パパ育休施行の前と後で状況が異なるものの、男性の育児休業取得においては中小企業の環境整備が特に重要だと考えられます。
介護休業者の割合は0.06%
次に、雇用均等基本調査における介護休業制度の状況を見ると、規定を設けている事業所の割合は従業員数30人以上の事業所で90.0%(2019年の調査より1.0ポイント増)、5人以上の事業所で72.8%(同1.2ポイント減)でした。
介護休暇制度の規定においては30人以上の事業所で86.5%(2018年の調査より5.5ポイント増)、5人以上では69.9%(同9.1ポイント増)でした。
しかし、2021年4月1日から2022年3月31日の間に介護休業取得者がいた事業所の割合は1.4%。
常用雇用者に対する介護休業者(調査前年度1年間に介護休業を開始した者)の割合は0.06%でした。
同期間に介護休暇取得者がいた事業所も2.7%に留まり、介護をしている有業者が365万人(総務省「令和4年就業構造基本調査」による)いることを踏まえると、取得率は低いというのが現状のようです。
介護は見通しが立てにくい
同調査では、働きながら家族の介護を行う労働者に対する事業所の援助措置についても調査しています(図表参照)。
導入率が最も高いのは「短時間勤務制度」の62.1%、次いで「始業・就業時刻の繰上げ・繰下げ」の32.2%でした。
また、介護の問題を抱える従業員の実態を把握している事業所の割合は62.0%に留まっています。
介護は育児よりも対象者の容態が複雑であり、ケアをする期間や内容の見通しが立てにくいという問題があります。
しかし、介護に直面する人材は企業の中核を担う世代のケースが多く、離職された場合の補充が困難になることが懸念されます。
企業は従業員の状況を把握し、適切な支援を検討していく必要があるといえます。