未提出や虚偽の記載は処罰の対象になる 法定四帳簿の指摘事項への対応
労働者を雇用するすべての事業者は、労働基準法・労働基準法施行規則において、「法定四帳簿」を正しく作成・運用し、適正な労務管理を行うことが求められています。
ここでは、労働基準監督署の調査に対応できる「法定四帳簿」の重要性と整備のポイントを見ていきましょう。
法定四帳簿とは
法定帳簿は、法令によって定められた帳簿です。
「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の法定三帳簿に加えて、2019年4月1日から「年次有給休暇管理簿」が追加され、4種類の帳簿を整備し、保存することが義務付けられました。
これらを「法定四帳簿」といい、いずれも必要事項が記載されていれば、どんな様式でも構わないとされています。
保存期間は、2020年4月1日施行の改正動労基準法第109条により、5年に延長されました。
現状は経過措置として従来の3年ですが、5年の保存期間を見据えて対応することが重要です。
労働者名簿の運用
労働者名簿は事業場ごとに、日雇労働者を除くすべての労働者について作成する必要があります。
必須記載事項は、労働者の氏名、生年月日、履歴、性別、住所、従事する業務の種類、雇入れの年月日、退職の年月日とその事由、死亡の場合はその年月日と原因です。
記載事項に変更があった場合は遅滞なく訂正しなければなりません。
保存期間の起算日は「労働者の死亡、退職または解雇の日」です。
賃金台帳の運用
賃金台帳は事業場ごとに作成し、賃金支払いの都度、労働者ごとに遅滞なく記入する必要があります。
必須記載事項は、労働者の氏名、性別、賃金計算期間、労働日数、労働時間数、時間外・休日・深夜の労働時間数、基本給および手当額、賃金控除額です。
保存期間の起算日は、「最後の記入日」となっています。
賃金台帳は、一般的な給与明細や源泉徴収簿での代用はできません。
源泉徴収簿を兼ねた賃金台帳を使用する場合は、記載事項に記入漏れがないか確認しましょう。
また日雇労働者に関しては、賃金台帳は必要ですが、賃金計算期間の記載は不要です。
出勤簿の運用
出勤簿は、労働者の労働時間を把握するための帳簿です。記載事項は、労働者の氏名、出勤日、出勤日ごとの始業及び終業時刻、出勤日別の労働時間数と休憩時間数、時間外・休日・深夜の労働時刻と時間数です。
厚生労働省作成の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」によると、労働時間の把握はタイムカードやICカード、パソコンの使用時間記録などの客観的な記録により把握することが求められています。
自己申告制においては、適正な時間把握を行うための十分な説明と、実態と申告が乖離する場合の実態調査が義務付けられています。
2019年4月以降、客観的な記録による労働時間の把握は、法的義務となっています。
高度プロフェッショナル制度対象労働者を除くすべての労働者が対象となっているため、留意しましょう。
年次有給休暇管理簿の運用
すべての企業は、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者含む)に対し、年5日については、使用者が時期を指定して取得させることが義務付けられています。
使用者は、年次有給休暇を与えた時期、日数及び基準日を労働者ごとに明らかにした帳簿を作成し、保存しなければなりません。
労働者名簿や賃金台帳と併せて調製することも可能です。
法定四帳簿に対する是正勧告
法定四帳簿に起因する是正勧告では、帳簿を作成していない、記入漏れがある、賃金台帳を事務委託した会社に預けて自社で保存していない、などのケースがあります。
年次有給休暇管理簿を除き、規定に違反した場合は労働基準法により30万円以下の罰金に処される場合があります。
また労働基準監督署の調査の際に帳簿を提出しない、または虚偽の記載をした帳簿を提出した場合も処罰の対象となるため、適正な整備が重要です。