2025年までに年次有給休暇の取得率70%を目指す 時間単位の年次有給休暇制度の活用法
「時間単位の年次有給休暇制度」とは、年次有給休暇を時間単位で分割して活用する制度です。
年次有給休暇の取得率向上が求められる中で、時間単位の年次有給休暇制度(以下、「時間単位年休」)を導入することのメリット・デメリット、活用上の留意点を確認しましょう。
年次有給休暇の取得促進
政府は、年次有給休暇の取得率を「2025年までに70%」とする目標を掲げています。
厚生労働省がまとめた「令和4年就労条件総合調査」によると、取得率は2018年に50%を超え、2019年の働き方改革に伴う「年5日の年次有給休暇取得の義務化」施行以降は急激に上昇して、2022年の調査では58.3%と過去最高となっています。
厚生労働省は「労働者の健康を確保するとともに仕事と生活の調和がとれた社会を実現するためには、企業などが自社の状況や課題を踏まえ、年次有給休暇を取得しやすい環境づくりを継続して行っていくことが重要である」としています。
その取り組みの一つとして、治療のための通院、子どもの学校行事への参加や家族の介護など、労働者の様々な事情に応じた休み方に対応するために、時間単位年休の活用が推奨されています。
時間単位年休とは
年次有給休暇の付与は原則1日単位ですが、労働者が希望し、使用者が同意した場合は、1日単位での取得の阻害にならない範囲で、半日単位でも可能となります。
2010年には、まとまった日数の休暇を取得するという本来の趣旨を踏まえつつ、仕事と生活の調和を図る観点から労働基準法が改正されました。
年5日を限度として、労使協定の締結により、時間単位での年次有給休暇の付与が可能となりました。
これを時間単位年休といい、分単位など時間未満の単位での付与は認められません。
導入の方法
時間単位年休を導入する場合は、まず常時10人以上の労働者を使用する事業場においては、就業規則に年次有給休暇の時間単位での付与について定めることが必要です。
また実際に導入する場合には、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者との間で、書面による労使協定を締結する必要があります。
労使協定で定める項目は、1.時間単位年休の対象労働者の範囲、2.時間単位年休の日数、3.時間単位年休1日分の時間数、4.1時間以外の時間を単位として与える場合の時間数の4項目です。
この労使協定は労働基準監督署に届け出る必要はありません。
導入に関する留意点
労使協定で定める事項について、一部の労働者を対象外とする場合には、事業の正当な運営を妨げる場合に限られます。
「育児を行う者」など取得目的により対象範囲を定めることはできません。
また時間単位年休の日数は年5日以内とし、1日分の年次有給休暇が何時間分の時間単位年休に相当するかを定めます。
1時間に満たない端数がある場合は時間単位に切り上げます。
例えば、所定労働時間が1日7時間30分の場合は8時間となります。
2時間単位など、時間単位を1時間以外とすることも可能ですが、1.5時間と30分刻みで設定することはできません。
必ず1日の所定労働時間を上回らない範囲で、整数の時間で設定することが必要です。
導入へ向けて
2021年公表の労働政策研究・研修機構による「年次有給休暇の取得に関するアンケート調査」では、時間単位年休制度を導入している企業は22.0%であり、未導入の企業の労働者約半数が導入を希望していることが報告されています。
未導入の理由としては、勤怠管理や給与計算が煩雑になる、すでに半日単位の取得制度があるなどがあり、今後の意向について、検討中または今後検討予定の企業は23.6%と低いことがわかります。
時間単位年休の仕組みを正しく理解し、人材の確保・定着の観点から新しい働き方・休み方を実践するため、導入の検討を始めてみてはいかがでしょうか。