2024年度より支給停止調整額が50万円に変更 在職老齢年金の仕組みと働き方
高齢者の就業率の高まりとともに、年金をもらいながら仕事を続ける人が増えています。
定年後、厚生年金保険に加入しながら働く高齢社員が老齢厚生年金も受け取れる場合、年金額と給与・賞与額との関係で年金額が調整されますが、その調整基準が4月から改定されました。
在職老齢年金とは
定年退職後の再雇用または再就職により、厚生年金保険に加入して働きながら厚生年金の支給を受け取る場合には、再雇用または再就職後に支払われる給与、賞与に応じて支給されるべき年金額が調整され、その一部または全額が支給停止となります。
この調整される基準を在職老齢年金の「支給停止調整額」といいます。
この支給停止調整額が、2023年度は48万円でしたが、2024年度は50万円に引き上げられました。
調整のしくみ
在職老齢年金の支給調整は、下図の算式に基づき月を単位に計算されます。
「基本月額」とは、老齢厚生年金(報酬比例部分)として支給される年金の月額(老齢厚生年金額÷12)をいいます。
「総報酬月額相当額」とは、毎月の賃金月額に基づく社会保険料の標準報酬月額をいいますが、賞与が支給される場合は社会保険料の算定の基礎となる標準賞与額(直近1年間の賞与総額)を合算して、それを12で除した額となります。
このようにして求めた「月額報酬」と「年金月額」とを合算し、50万円を超過しなければ、老齢厚生年金は支給調整をされずに全額支給され、50万円を超過した場合には超過した額に応じて支給調整されます。
例えば、「標準報酬月額28万円、賞与は年に2回支給で各60万円」という条件で厚生年金保険の被保険者として働いており、老齢厚生年金で120万円(基本月額10万円×12)を受け取れる高齢社員の場合は、総報酬月額相当額は38万円(標準報酬月額28万円+過去1年間の標準賞与額の合計120万円÷12ヵ月)となります。
この例では、「年金の月額」と「総報酬月額相当額」を合算した額は48万円(=10万円+38万円)で、50万円を超えていないので、月額10万円の年金は支給調整されることなく、全額を受け取れることになります。
この場合、原則として、65歳から支給される老齢基礎年金は支給調整対象外ですので、65歳以降で厚生年金保険の被保険者として働いている場合には賃金と年金(老齢基礎年金+老齢厚生年金)の両方が全額支給されることになります。
しかし、標準報酬月額32万円、賞与同額で働くと総報酬月額相当額は42万円で、基本月額10万円を合わせて52万円となり、支給停止調整額50万円を2万円超えますので、(42万円+10万円ー50万円)÷2=1万円は支給停止となります。
年金が支給される高齢社員は、在職老齢年金制度による年金が支給停止されることを嫌悪する場合が多く、年金が支給停止されない範囲の賃金で働くことを希望します。
したがって、このようなニーズを踏まえて勤務形態を複数設け、それに合わせた賃金体系の構築・運用ができれば、高齢社員の活躍の場も増えることでしょう。