被験者の適用拡大、給付制限の見直し等を含む 雇用保険法の改正のポイントと影響
去る5月10日に雇用保険法の一部改正が国会において可決・成立し、2025年4月1日以降、順次施行となります。今回の改正は、雇用保険者の適用拡大や自己都合離職者の給付制限の見直しなど、企業及び労働者のいずれにも影響があるものとなっています。
被保険者の適用拡大
現在、雇用保険の被保険者となるには、1. 1週間の所定労働時間が20時間以上であること、2. 31日以上雇用される見込みがあることの2つの要件を満たさなければなりません。
しかし、週の就業時間が20時間未満の労働者が増加していることなど、働き方や生活維持のあり方の多様化が進展するなかで、雇用のセーフティネットを広げるために、1.の週所定労働時間について「週20時間以上」から「週10時間以上」に引き下げることになりました(2028年10月1日施行)。
これにより、最大500万人程度が新たに雇用保険の適用を受けることが見込まれます。
パートタイマー等の短時間労働者(学生を除く)を多く雇用している企業は、社会保険の適用拡大と同様に雇用保険の被保険者となる雇用者が増えることになり、法定福利費の負担が一層増えることとなります。
被保険者期間の計算の見直し
被保険者の適用拡大に伴い、被保険者が失業した場合に支給を受ける基本手当(失業手当)の受給要件の見直しも行われました。
基本手当の支給を受けるには、離職日から遡って前2年間に雇用保険の被保険者であった期間が12カ月以上(会社の倒産・解雇、雇止め等の理由により離職した場合は離職日前1年間に6カ月以上)なければなりません。
現行法での「被保険者期間1カ月」とは、賃金の支払いの基礎となった日数が11日以上ある月または賃金の支払いの基礎となった労働時間数が80時間以上である月をいいます。
改正法では、「賃金の支払いの基礎となった日数が6日以上ある月」または「賃金の支払いの基礎となった時間数が40時間以上ある月」を被保険者期間1カ月とすることになりました。
給付制限の見直し
現在は、自己都合で退職した者が基本手当の支給を受けるには、原則として2カ月間の給付制限期間が設けられており、その間は失業していても基本手当の支給を受けられません。
しかし、今回の改正では給付制限期間を1カ月とし、失業期間中や離職日前1年以内に、雇用安定及び就職促進に資する一定の教育訓練を受講した場合には、この給付制限が解除されます(2025年4月1日施行)。
これにより、失業中でも一定の生活費を確保しながら教育訓練を受けられ、転職も有利に展開することが可能となります。
ただし、5年間で3回以上自己都合で離職した場合の給付制限期間「3カ月間」についての変更はありません。
教育訓練受講中の生活給付の創設
現在は、労働者が在職中に自発的に職業に資する教育訓練を受けるために休暇(教育訓練休暇)を取ったりして仕事を離れても、訓練期間中の生活を支援する仕組みがありません。
そこで、被保険者期間が5年以上ある者が無給の教育訓練休暇を取得した場合、教育訓練休暇給付金として賃金の一定割合を支給することになりました。
給付内容は被保険者が離職した場合に支給される基本手当と同額で、給付日数は被保険者期間に応じて90日、120日、150日のいずれかとなります(2025年10月1日施行)。
その他
以上の他、受講費用の一部が支給される教育訓練給付金においては、一定の要件を満たせばさらに10%が追加支給されることになりました(2024年10月1日施行)。
現在、再就職に伴って支給される就業手当の廃止や就業促進定着手当の上限を基本手当の支給残日数の20%(原稿は原則40%)に引き下げるなどの改正もあります(2025年4月1日施行)。
また、失業中の受給資格者が認定期間中に働いて収入を得た場合の基本手当の減額規定が削除されました。