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専門職労働者の同意なき配置転換は違法と判決 職種・地域限定社員の配置転換における留意点

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投稿日:2024年8月28日(水)

4月の配置転換命令を巡る訴訟で最高裁判所第二小法廷が下した判決は、職種限定合意のある配置転換に関する新たな判例であり、今後の労務管理に大きな影響を与えると予想されます。

そこで、求人・採用から契約締結、雇用継続に至るまで、配置転換における留意点を確認しましょう。

判決の経緯

2024年4月26日、配置転換に関する損害賠償請求訴訟において、最高裁第二小法廷は配置転換命令を有効とした控訴審判決、審理を差し戻しました。

本件は、技術職として長年勤務した従業員を、個別同意を得ることなく事務職に配置転換することの妥当性が争われた裁判です。

第一審及び控訴審では、職種を限定とした書面による合意はないものの、職務内容や長期雇用の慣行化、専門職としての経歴や採用の経緯などの実態から判断して、黙示の職務限定合意が認められました。

一方、本職務に係る業務が廃止予定であることや事務職に欠員が生じていた実態を踏まえて、現状における配置転換命令は解雇を回避する目的であり、業務上必要があるとして、就業規則における使用者権限は有効、損害賠償請求は棄却されました。

しかし、最高裁判決においては、第一審及び控訴審での判決を支持しながらも、職種限定合意が存在する場合の配置転換には当然個別合意が必要であり、本件においては、個別同意が得られない場合の例外としての使用者権限も有しない、つまり、そもそも配置転換命令権は有しない、との判決に至っています。

配置転換命令権とは

配置転換とは、人材育成や雇用維持などを目的として、職務内容や勤務場所を長期にわたって変更する人事異動のことを指します。

就業規則に「配置転換を命じることがある」との根拠規定を設け、労働者に周知した上で、労働条件の変更内容に合理性がある場合に配置転換における使用者権限は有効となります。

ただし、配置転換命令権(以下、配転命令権)には、使用者の一方的な権限行使とならないように、1.業務上の必要性、2.人選の合理性、3.配慮義務に留意する必要があります。

例えば、内部告発による逆恨みなど動機や目的が不当な配置転換は、配転命令権の権利濫用として無効となります。

また、通勤に長時間を要したり、家族の介護や転居が困難な事由があったりするなど、労働者の私生活に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益があるとみなされる場合も無効となります。

個別の労働契約と配転命令権

配転命令権を行使するにあたっては、職種や勤務地が限定されていると解される労働契約の場合、その限定された職種や勤務地の範囲が配転命令権の範囲となります。

業務の必要上、配置転換を要する場合は、個別同意が必要です。

対象労働者の合意を得られた場合は、使用者権限は有効と認められますが、合意の有効性については、労働者は使用者の指揮命令下に服す立場であることから、具体的かつ十分な説明を行い、情報を提供した上で、労働者の自由な意思に基づいてなされた同意であることが求められます。

一方、対象労働者の同意を得られない場合、個別同意なしに配置転換を命じることができるか否かについては、雇用状況に応じて使用者権限の是非が問われることになります。

例えば、長期雇用が慣行化している労働者に対し、当該職種や勤務地が廃止された場合や本人の能力が低下した場合においては、配転命令権は解雇を回避し雇用を維持するために必要な措置として、使用者権限が有効であると判断されます。

労働条件明示事項の追加義務

さらに個別の労働契約においては、2024年4月以降に契約締結・更新した場合、改正労働基準法施行規則等に基づく労働条件明示事項の追加義務に留意して、職種や勤務地が限定されているかの判断を行う必要があります。

労働条件明示事項の追加義務では、すべての労働契約締結時と有期労働契約更新時のタイミングごとに、雇入れ直後の就業場所・業務の内容に加え、将来の配置転換などにより変わり得る就業場所・業務の「変更の範囲」について明示することが求められます。

例えば、あらかじめ就業規則などの規定によりテレワークを行うことが想定されている場合は、就業場所としてテレワークを行う場所が含まれるように明示しなければなりません。

そのほか、有期労働契約締結時と更新時には更新上限の有無と内容、無期転換申込機会と無期転換後の労働条件を明示することが必要となります。

改正職業安定法においても同様に、労働者募集を行う場合には、求職者に対して労働条件の明示事項の追加が義務となります。

追加事項は、上記の就業場所・業務に関する「変更の範囲」のほか、更新回数の上限を含む「有期労働契約を更新する場合の基準」があります。

労働契約において明示事項を追加することにより、労働者は自身の将来を予見しやすくなります。

使用者は、採用する労働者の将来像を踏まえて内容を吟味し、記載事項に抜け、漏れがないように注意して、書面または労働者の希望によりメールにて、明示・説明することが求められます。

配置転換における留意点

企業において、その特性上、転勤や長期出張を含む配置転換がある場合は、必ず就業規則等に明確に規定しておかなければなりません。

また、求人を行うにあたって配置転換の可能性がある場合には、求人情報にその旨を記載しましょう。

さらに採用面接においても、充分に内容説明を行い、段階を踏んで、労働者本人が納得した上で労働契約を交わすことができるように、丁寧に対応することが重要です。

ただし、就業規則に規定されているからといって、むやみに配転命令権を行使できるわけではありません。

個別の労働契約においては、配置転換について、会話のなかで触れるだけで説明したつもりとなっているケースも見受けられます。

その場合、労働契約の内容についてのお互いの認識に齟齬が生まれ、不信感から労働問題に発展することにもなりかねません。

特に専門的な職種については、職種限定の黙示合意があると考えられるため、配転命令権を行使する際は、業務上の必要性を明確にして、慎重に人選を行い、対象労働者に対して意向確認を行うことが重要です。

配転命令権が権利濫用で無効とされる判断基準には、育児・介護の状況に配慮されているか(育児・介護休業法第26条)、ワーク・ライフ・バランスへの配慮がなされているか(労働契約法第3条第3項)も含まれています。

キャリアや生活環境など労働者個人の人生設計に与える影響に留意し、職種・地域限定合意の有無にかかわらず意向確認を行うなど、企業と労働者が共に成長できる配置転換を目指していきましょう。

配置転換命令権における使用者権限

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