2024年度の引き上げは過去最高額 地域別最低賃金の引き上げと企業の対応策
2024年10月に地域別最低賃金が引き上げられました。
改定額の全国加重平均額は1055円で、前年度から51円の引き上げは過去最大です。
今年度の引き上げを受けて企業が行うべき対策と、中小企業・小規模事業者に対する国の支援策について確認しましょう。
2024年度の引き上げ額
2024年7月の第69回中央最低賃金審議会で、今年度の地域別最低賃金額改定の目安についての答申が取りまとめられました。
この答申を参考に各地方最低賃金審議会で調査・審議・答申が行われ、各都道府県労働局長により改定額が決定されて、10月から11月の間に順次発行されます。
今年度の地域別最低賃金額は、47都道府県で50円から84円引き上げとなり、改定額の全国加重平均額は1055円です。
昨年度の1004円から51円の引き上げは、1978年度の目安制度開設以降、最高額となっています。
引き上げの背景
最低賃金は、最低賃金審議会において、賃金の実態調査結果などの各種統計資料を参考にしながら、1.労働者の生計費、2.労働者の賃金、3.通常の事業の賃金支払能力の3要素を考慮し、決定または改定されます。
今年度は、1で消費者物価指数が昨年に引き続き高水準となっていること、2で賃金の引き上げが全体で5%台と33年ぶりの高水準であり、賃金上昇率2.3%も2002年以降最大であること、3で売上高経常利益や従業員一人当たりの付加価値が高水準で推移していることなど、景気や企業の利益において改善傾向がみられることが、引き上げの理由として挙げられています。
さらに「2030年代半ばまでに最低賃金を1500円とする」という目標を早期に実現するための考慮要件として、中小企業・小規模事業者における自動化・省力化投資、事業継承、M&Aなどの環境整備を官民が連携して努力すること、賃上げができないあるいは労務費などのコスト増を十分に価格転嫁できていない企業が一定程度存在することが挙げられています。
以上を踏まえて、引き上げ額の目安を5.0%(50円)として検討することが適当であるとの答申が取りまとめられました。
企業の対策と国の支援策
まず、企業においては、最低賃金の引き上げを受けて、従業員、アルバイトなどに支払っている賃金が最低賃金額以上になっているかを確認しなければなりません。
日給や週給、月給制などの場合は、対象となる賃金額を所定労働時間で除して時間単価に換算し、適用される最低賃金額と比較しましょう。
最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金です。
具体的には、実際に支払われる賃金から、結婚手当などの臨時に支払われる手当や賞与など一カ月を超える期間ごとに支払われる賃金、時間外割増賃金や休日・深夜の割増賃金など所定労働時間や所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金、その他精皆勤手当・通勤手当及び家族手当を除外したものが、対象となります。
賃上げ原資を確保することが難しい場合は、厚生労働省や中小企業庁の助成金、補助金などの利用を検討してみましょう。
中小企業・小規模事業者への支援施策には、業務改善助成金や賃上げ促進税制など賃金引き上げに関する支援や、固定資産税の特例措置や中小企業省力化投資補助事業など生産性向上に関する支援、労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針など下請け取引の改善・新たな取引先の開拓に関する支援、セーフティネット貸付制度など資金繰りに関する支援、その他人材育成を含む雇用に関する支援があります。
また、各都道府県には、専門家に相談できる「よろず支援拠点」をはじめとした相談窓口を設置している他、経済産業省は、補助金・給付金等の申請や事業のサポートをする中小企業向け補助金・総合支援サイト「ミラサボplus」を開設しています。
積極的に活用して、最低賃金の引き上げを好機とし、従業員の処遇改善と生産性の向上を目指していきましょう。