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端数を適正に処理しないと労働基準法違反に 労働時間と割増賃金計算の端数処理の注意点

投稿日:2025年1月28日(火)

厚生労働省は、労働基準監督署の調査での指摘や、労働者からの苦情・申告が多い労働時間の端数処理に対し、リーフレット「労働時間の適正に把握し正しく賃金を支払いましょう」を作成するなどして是正を呼びかけています。

ここでは、労働時間及び割増賃金計算の端数処理についてまとめます。

労働時間や賃金計算における端数処理の誤りから、労働基準監督署の調査で賃金未払いを指摘され、是正勧告されることがあります。

労働時間管理や賃金計算がシステム化されている場合は、適法な設計となっているか確認する必要があります。

労働時間の端数処理

1. 1日単位の労働時間の端数

労働時間は、原則として1分単位で把握しなければなりません。

たとえば、始業9時00分、終業18時00分(休憩1時間)の1日8時間労働の場合において、業務終了時刻が18時10分だったときに、15分未満を切り捨てて18時00分とするような処理は違法となります。

このような処理をすると1日につき10分、所定労働日数20日としたと場合に200分(3時間20分)の時間外労働時間について賃金不払いとなります。

ただし、「15分未満は15分」とするなど、残業時間の端数を切り上げて丸め処理をすることは労働者にとって有利な取扱いになるため認められます。

また、遅刻や早退の時間の端数処理をする場合に、5分、10分の遅刻・早退を15分または30分単位で切り上げて処理することは実際の不就労時間より多く控除することになるので、これも違法で賃金不払いとなります。

ただし、5分や10分の遅刻・早退について15分未満または30分未満は切り捨て、遅刻早退0分とする端数処理は労働者に有利となるため問題ありません。

2. 1カ月単位の労働時間の端数

賃金を計算する場合、一賃金支払期間における1カ月の時間外労働、休日労働及び深夜労働に係る端数処理については、当該一賃金支払期間の1日単位の分単位での実労働時間の合計、または1.の端数処理による労働時間の合計によることとなります。

ただし、合計した労働時間数に1時間未満の端数がある場合には30分未満の端数を切り捨て、30分以上1時間未満の端数がある場合には切り上げて1時間として計算することは認められています(昭和63.3.14基発150号)。

割増賃金の基礎となる時間給の端数処理

時間外労働や休日労働などの割増賃金を計算する場合には、時間給単価に割増率(法定時間外労働は2割5分以上、法定休日労働は3割5分以上)を乗じて計算しなければなりません。

したがって、時間給の場合はその額、日給制の場合は1日の所定労働時間で除し、月給制の場合は月の所定労働時間で除して、時間給単価を算出しなければなりません。

なお、通常は月給制の場合は各月の所定労働日数、所定労働時間数が異なるため、月給額を「1カ月平均の所定労働時間数」(年間所定労働日数×1日の所定労働時間÷12月)で除すことになります。

この「1カ月平均の所定労働時間数」の端数を切り上げると、1時間あたりの賃金が少なくなり、労働者にとって不利になるため、端数はそのままにするか、切り捨てて取り扱うこととされています。

例えば1日8時間労働で年間休日が120日の場合は次のようになります。

(365-120)÷12×8=163.33333…

この場合、163時間または163.3時間(そのままでも可)とし、切り上げて164時間や163.4時間にすることはできません。

ただし、1時間当たりの賃金額及び割増賃金額の1円未満の端数については、事務の簡便化のため50銭未満切り捨て、50銭以上1円未満を1円として処理することは認められています。

また、1カ月間における時間外労働、休日労働、深夜労働のそれぞれの割増賃金を計算する際、その総額に1円未満の端数が生じた場合には、50銭未満は切り捨て、50銭以上1円未満を1円に切り上げることも認められています。

賃金計算の端数処理については、就業規則または賃金規程を定めて正しく計算しましょう。

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