一部の手続きの電子申請が原則義務化 労働安全衛生関係の報告事項と申請上の注意点
2025年1月1日より労働安全衛生関係の一部手続きの電子申請が原則義務化されました。
企業は従来の紙ベースからオンライン申請に変更するなど、新たな対応が求められます。
そこで、電子申請が義務化された背景やその目的、企業が押さえておくべきポイントを確認しましょう。
電子申請の利用促進
電子申請とは、一般的にオンライン化された申請・届出等の手続きの総称です。
1990年代半ばのインターネットにおける商用利用開始を契機としたIT革命以降、政府は世界最先端のIT国家になるという目標を掲げ、行政内部の電子化やネットワークインフラ整備、法やルールの整備を推進してきました。
経済のグローバル化は、経済・システムのデジタル化を急速に加速させ、2017年以降は、行政の在り方そのものをデジタル前提で見直す「デジタルガバメント」の確立が政府の目標に掲げられています。
さらに、コロナ禍でデジタル化の遅れが顕在化したことにより、経済成長を阻害する規制・制度の見直しや変革が求められました。
行政手続きにおける電子申請の利用促進はその取り組みの一環で、行政手続き簡素化の3原則(1.電子化の徹底、2.同じ情報は一度だけ、3.書式・様式の統一)のもと、行政手続きコストを削減することを目的としています。
電子申請の義務化
事業者は、じん肺法や労働安全衛生法、労働基準法並びに関係省令において、労働者の被災状況や、健康状態、事業者が講ずべき措置の実施状況などを把握するため、指定様式による各種報告書の提出が義務となっています。
2025年1月1日以降は、改正労働安全衛生規則等の施行に伴い、各種報告の一部について電子申請が原則義務化されました。
今回の改正では、書面による報告内容の誤記や記入漏れなどを防止し、正確な統計の集計を可能とするなど行政事務の効率化を図ることを目的として、特に報告数の多い8つの報告が対象となっています。
電子申請が義務化された報告は図表の通りです。
その他、特定化学物質をはじめとする各種特殊健康診断結果報告など多くの届け出の電子申請が可能となっています。
電子申請の方法
電子申請の方法としては、デジタル庁が運営する行政ポータルサイトである「e-Gov」でアカウントを登録し、フォートマットに必要事項を入力する2ステップで、届出・申請が可能です。
電子申請は、スマートフォンなどのモバイル端末でも操作できますが、利用する場合にはe-Govアカウント、GビズID、Microsoftアカウントなどが必要となります。
また、厚生労働省のポータルサイト「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」は、インターネットを利用して、所轄の労働基準監督署への申請や届出を支援するサービスです。
届出をする帳票の作成・印刷のほか、入力した情報を「e-Gov」を介して直接電子申請することが可能であり、よりスムーズに申請できるようになっています。
電子申請を行う端末を所有していないなど電子申請を行う環境が整っていない場合においては、当面の間、経過措置として書面による報告を行うことができます。
本サービスを利用する場合には、「電子申請を利用しない」を選択し、作成した帳票を印刷して所轄の労働基準監督署に提出する必要があります。
電子申請の義務化は、企業にとっても手続きの簡略化やミスの削減といったメリットが期待できるため、職場の環境整備と合わせて対応を検討していきましょう。
