労働者の募集・採用時に年齢制限を設けることができなくなります。
(平成19年10月1日から)
1.雇用対策法の改正について
- 改正の背景
- これまで、募集及び採用に係る年齢制限の緩和について努力義務とされてきました。しかし、依然として年齢制限を行う求人が相当数あり、高年齢や年長フリーターなど、一部の労働者の応募の機会が閉ざされている状況にありました。
- そのため、このような状況を改善し、労働者の一人一人に、より均等な機会が与えられるよう、雇用対策法が改正され、募集・採用における年齢制限が禁止されました(平成19年10月1日から施行)。
- 改正の内容
- 労働者の募集及び採用の際には、原則として年齢を不問としなければなりません。
- この年齢制限の禁止は、公共職業安定所を利用する場合をはじめ、民間の職業紹介事業者、求人広告などを通じて募集・採用する場合や事業主が直接募集・採用する場合を含め、広く「募集・採用」を行うに当たって適用されます。
- 改正の留意点
- 年齢不問として募集・採用を行うためには事業主が職務に適合するか労働者であるか否かを個々人の適性、能力などによって判断することが重要です。
このため、職務の内容、職務を遂行するために必要とされる労働者の適性、能力、経験、技能の程度など労働者が応募するに当たり求められる事項をできるだけ明示していただく必要があります。 - これにより、労働者側も、募集の内容を応募の前に把握することにより、応募するかどうかの判断が容易になり、求人を求職のミスマッチが解消されます。
- 求人の内容などについては、公共職業安定所から資料の提出や説明を求められることがあります。
- また、雇用対策法第10条に違反する場合などには、助言、指導、勧告等の措置を受ける場合があるとともに、職業安定法第5条の5ただし書に基づき、公共職業安定所や職業紹介事業者において求人の受理を拒否される場合があります。
2.例外的に年齢制限を行うことが認められる場合
募集・採用における年齢制限は禁止されますが、合理的な理由があって例外的に年齢制限が認められる場合(以下、「例外事由」という。)を厚生労働省令で定めています。
募集・採用の際に年齢制限をする場合には、次のいずれかの例外事由に該当することが必要です。
- なお、これまで認められてきた体力等が不可欠な業務である等の理由での年齢制限はできなくなります。
例外事由(雇用対策法施行規則第1条の3第1項)
- 1号・・・定年年齢を上限として、当該上限年齢未満の労働者を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
- 2号・・・労働基準法等法令の規定により年齢制限が設けられている場合
- 3号のイ・・・長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
- 3号のロ・・・技能・ノウハウの継承の観点から、特定の職種において労働者数相当程度少ない特定の年齢層に限定し、かつ、期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
- 3号のハ・・・芸能・芸術の分野における表現の真実性等の要請がある場合
- 3号のニ・・・60歳以上の高年齢者又は特定の年齢層の雇用を促進する施策(国の施策を活用しようとする場合に限る。)の対象となる者に限定して募集・採用する場合
例外事由に該当する具体例①
1号 定年年齢を上限として、当該上限年齢未満の労働者を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
期間の定めのない労働契約については、定年年齢を上限として年齢制限をすることが認められます。
”認められる場合”
- 「60歳未満の方を募集(定年が60歳)」
”認められない場合”
- 有期労働契約である場合
「60歳未満の方を募集(契約期間6ヶ月)」 - 上限年齢と定年年齢が一致していない場合
「60歳未満の方を募集(定年が63歳)」 - 下限年齢を付している場合
「40歳以上60歳未満の方を募集(定年が60歳)」 - 業務の習熟に一定期間が必要であることを理由に、上限年齢を下げている場合
「□□業務に習熟に2年間必要なため、58歳以下の方を募集(定年が60歳)」→ 上限年齢を60歳未満とした上で、 「□□業務に習熟に2年間必要である」旨を求人に明示してください
2号 労働基準法等法令の規定により年齢制限が設けられている場合
労働基準法等の法令において、特定の年齢層の就業が禁止・制限されている業務については、年齢制限をすることが認められます。
”認められる場合”
- 「18歳以上の方を募集(労働基準法第62条の危険有害業務)」
- 「18歳以上の方を募集(警備業法第14条の警備業務)」
例外事由に該当する具体例②
第3号に該当する個々の事項は、第1号及び第2号のように、当然に年齢制限が認められる場合ではありませんが、企業等における雇用管理の実態など踏まえ、年齢による制限を必要最小限のものとする観点から見て合理的な制限である場合を定めています。
3号のイ 長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
長期勤続によるキャリア形成の観点から、新規学卒者等をはじめとした若年層等を期間定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合には、上限年齢を定めることが認められます。
ただし、
①対象者の職務経験について不問とすること
②新規学卒者以外の者にあっては、新規学卒者と同等の処遇であること
という要件を満たす必要があります。
- 「同等の処遇」とは、新卒者と同様の訓練・育成体制・配置・処遇をもって育成しようとしている場合を指すものであり、賃金等が新卒者と完全に一致しなければならない趣旨ではありません。
”認められる場合”
- 「35歳未満の方を募集(職務経験不問)」
- 「40歳未満の方を募集(簿記2級以上)」
(必要な免許資格を定めていても、実務経験を有する資格でなければ認められる)
- 「若年者」とは、必ずしも35歳未満に限られるものではありません。
”認められない場合”
- 有期労働契約である場合
「35歳未満の方を募集(契約期間6ヶ月)」 - 職務経験を付している場合
「40歳未満の方を募集(□□業務の経験のある方)」 - 下限年齢を付している場合
「20歳以上35歳未満の方を募集」
3号のロ 技能・ノウハウの継承の観点から、特定の職種において労働者数が相当程度少ない特定の年齢層に限定し、かつ、期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
技能・ノウハウの継承の観点から、特定の職種(※1)の特定の年齢層(※2)において労働者数が相当程度少ない(※3)場合には、この特定の年齢層に限定して募集・採用することが認められます。(ただし、期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合に限ります。)
- 1 「特定の職種」については、技能・ノウハウの継承が必要となる具体的な職種(注)の名称を用いてください。
- 厚生労働省「職業分類」の小分類若しくは細分類又は総務省「職業分類」の小分類を参考してください。
例:機械・電子技術者(中分類)における電子通信技術者(小分類)、農林水産業・食品技術者(中分類)における水産技術者(小分類)、家庭生活支援サービス職業従事者(中分類)におけるホームヘルパー(小分類)など
- 2 「特定の年齢層」は、30歳~49歳のうちの特定の5~10歳幅の年齢層としてください。
- 3 「相当程度少ない」場合には、同じ年齢幅の上下の年齢層と比較して労働者数が1/2以下である場合が該当します。
「相当程度少ない」かどうかを判断するに当たっては、企業単位で判断することが原則になりますが、人事管理制度上、一部の事業所の採用などの雇用管理を行っている場合には、一部の事業所を単位として判断することも認められます。
”認められる場合”
- 「□□者の電気通信技術者として30~39歳の方を募集
(□□者の電気通信技術者はて20~29歳が10人、30~39歳が2人、40~49歳が8人)」
”認められない場合”
- 「30歳から49歳」の範囲に収まっていない場合
「□□者の電気通信技術者として25~34歳の方を募集」 - 年齢幅が「5~10歳」を超えている場合
「□□者の電気通信技術者として35~49歳の方を募集」 - 同じ年齢幅の上下の年齢層と比較して1/2以下となっていない場合
「□□者の電気通信技術者として30~39歳の方を募集(□□者の電気通信技術者はて20~29歳が30人、30~39歳が15人、40~49歳が25人)」
3号のハ 芸能・芸術の分野における表現の真実性等の要請がある場合
芸術作品のモデルや、演劇等の役者の募集・採用において、表現の真実性等のために、特定の年齢層の労働者に限定して募集・採用することが認められます。
”認められる場合”
- 「演劇の子役のため、○○歳以下の方の募集」
”認められない場合”
- 単に、特定の年齢層を対象とした商品やサービスの提供が目的であり、芸術・芸能の分野に該当しない場合
「イベントコンパニオンとして、30歳以下の方を募集」
3号のニ 60歳以上の高年齢者又は特定の年齢層の雇用を促進する施策(国の施策を活用しようとする場合に限る。)の対象となる者に限定して募集・採用する場合
60歳以上の高年齢者に限定して募集・採用する場合には、年齢制限をすることが認められます。
また、特定の年齢層の雇用を促進する施策(雇入れ助成金等)を活用するため、その施策の対象となる特定の年齢層に限定して募集・採用する場合には、年齢制限をすることが認められます。
”認められる場合”
- 「60歳以上の方を募集」
- (中高年齢者トライアル雇用の対象として)「45歳以上65歳未満の方を募集」
- (若年者トライアル雇用の対象として)「35歳未満の方を募集」
”認められない場合”
- 60歳以上の高年齢者を募集・採用する際に上限年齢を付している場合
「60歳以上70歳未満の方を募集」 - 募集・採用する年齢層を国の施策の対象となる特定年齢層よりも限定している場合
(中高年齢者トライアル雇用の対象として)「45歳以上60歳未満の方を募集」
次のような募集は、認められません。
例外事由に該当する場合でなければ、年齢制限をすることはできません。年齢不問とした上で、以下の記載例のように職務の内容や、職務の遂行に必要な労働者の適性、能力、経験、技能などをできる限り具体的に明示してください。これにより、求める人材を雇用することが可能となります。
「若者向け洋服の販売職として、30歳以下の方を募集」
【求人票の記載例】
業務内容を明示してください。
「10歳代後半から20歳代前半までの若者向けの洋服の販売であり、宣伝をかねてその商品を着用して店舗に出る業務である。」
「長距離トラックの運転手として、45歳以下の方を募集」
【求人票の記載例】
業務内容と必要な能力等を明示してください。
「長時間トラックを運転して、札幌から大阪までを定期的に往復し、重い荷物(□□㎏程度)を上げ下ろしする業務であり、この業務を継続していくためには持久力と筋力が必要である。」
「高所作業を行う業務のため、55歳以下の方を募集」
【求人票の記載例】
業務内容と必要な能力等を明示してください。
「建設現場における高所(10m以上)での作業を行う業務であり、この業務を継続していくためには、持久力と筋力が必要である。」
3.年齢制限を設ける場合における理由の提示について
- 理由の提示義務について
- 高年齢者雇用安定法第18条の2第1項に基づく適切な理由の明示を行わない事業主は、高年齢者雇用安定法第18条の2第1項に基づき、公共職業安定所から、報告の徴収、助言、指導、勧告等の措置を受ける場合があります。
- また、やむをえない理由を提示しない求人の申し込みなどについては、職業安定法第5条の5ただし書に基づき、公共職業安定所や職業紹介事業者において受理を拒否される場合があります。
- 理由の提示に関する特例について
- 新聞や雑誌、広告等を活用して、労働者の募集・採用を行う場合で、求人広告紙面の制約により、詳細な情報の提供が難しいなどの理由から、あらかじめ当該広告等にやむ得ない理由を提示することが困難な場合
- 口頭により労働者の募集・採用を行う場合など、労働者の募集・採用の際に使用する書面又は電磁的記録がない場合
例外的に年齢制限を設ける場合(=例外事由のいずれかに該当する場合)において、上限(65歳未満のものに限る。)を定める場合には、求職者、職業紹介事業者に対して、その理由を書面や電子媒体により提示することが義務付けられています。(高年齢者雇用安定法第18条の2第1項)
以下の場合に限り、理由提示の方法に関する特例が設けられています。
事業主は、求職者の求めに応じて、遅滞なく、次のいずれかの方法により当該理由を示すことができることとしております。
- 書面の交付
- 電子メールやFAXの送信、ホームページへの掲示等、求職者が記録されは電磁的記録を出力することにより書面を作成することができるもの